2012年8月27日月曜日

遺伝子組換え食品の影響

食糧増産と高品質食品の産出を目的とした品種改良が、バイオ技術の高度化に伴い、遺伝子組換え(GM)による食品の普及にまで至りました。

直接的には農薬付けと批判されてきた近代農業から脱却し、作物の持つ遺伝子を人為的に組み替えることによって、虫害、気候変動などに対する耐性を強くするのが目的です。農薬に依存せず、良質な農産物を多く生産できるメリットは、科学技術の発達の賜物といえるでしょうが、GM食品の安全性そのものに対しての懸念点は早くから指摘されていました。

まず、環境に対する影響についてですが、1.GM作物の雑草化(生態系の破壊)2.除草剤耐性遺伝子などの導入遺伝子の環境への拡散(草などに耐性遺伝子が入る) 3ウイルスの変化(有害性)、未知の毒性が出現する危険 4.標的以外の生物への影響などといった、農作物の生育環境に直接インパクトを与える危険性がまず指摘されます。

このほか5.食品に含まれる栄養成分の破壊6.アレルギーの発生7.殺虫成分などの長期微量摂取(濃縮)による影響8.抗生物質が効かない体になる危険性など、食物連鎖上最終消費者としての人間が被る影響は決して過小評価できません。

こうした生態系的な影響については、先行する品種改良をチェックする技術が追いつかなくなっている面もあり、さらなる基礎的研究が急がれると考えますが、もう一方で、「社会的な影響」も見逃せません。

世界の食糧基地であるアメリカなどでは、巨大な資本を有した企業による食料生産が中心になっているのが現状です。とすると、開発されたGM技術などに対し、企業が特許権利を申請し押さえてしまうことで、いわば世界の食料を一手に握ることも不可能ではないのです。

例えば農薬メーカーのモンサント社(米)は、アンチセンス法に関する基本特許とパーティクルガン法の特許・BT(バチルス・チューリンゲンシス)遺伝子に関わる特許をすでに独占的に有しています。自社の農薬しか使えないGM作物を次々に開発して、農薬とセットで売り込むなども十分に可能なのです。

…アンチセンス法:ある遺伝子から転写されたmRNAを相補的なDNA分子を化学的に合成し、細胞に投与して2重鎖を形成させ、その発現を塩基配列特異的に抑制しようとする遺伝子発現制御法の1つである

外国から安価なGM農作物がこれまで以上に流入することによって、食糧の自給率低下がさらに進むといった、従来までの商品の価格競争という視点以上に、日本の農業がその根底から崩壊するのではないかという危機感を感じずにはおれません。

丸一浩

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